乳酸の蓄積によって動かなくなってきた。使いすぎて乳酸が溜まった。
運動や筋肉を使う事によって乳酸が蓄積し、その事が疲労の証のように使われています。乳酸を流しデットクスで疲労を回復と謳うサービスを目にした事もあるでしょう。
乳酸とはなにか
乳酸とはなにかを知るには、身体活動におけるエネルギー供給回路について見ていく必要があります。
身体活動のエネルギーとなるのがATPという物質です。
このATPはフォスファゲン機構・解糖・酸化機構と言ったATPの回路により、筋肉内やミトコンドリアから供給されます。
解糖系回路によりATPが作り出されるのは、ジョギングなどの有酸素運動よりも、無酸素性の激しい運動でより多くつくられます。
乳酸の代謝
乳酸とは無酸素性運動を行う事により発生する代謝物で、乳酸が出来て体内が酸性に傾く事で疲労が蓄積する。蓄積した乳酸を対処する事が疲労回復につながる。
このような見方が一般的な乳酸の見方ですが、果たして実際はどうなのでしょうか。
乳酸が蓄積するとは
マラソンで言うとハアハアと息が途切れるぐらいになると、血中の乳酸濃度が高くなると思ってください。
血中乳酸濃度が高くなるのはLTから酸素が足りなくなるためと考えられましたが、LTは最大より60-70%くらいの強度なので、呼吸が出来ないほどの辛さではありません。
まだ酸素を取り込める状況で乳酸が多くできることになります。
これは酸素が足りないからではなく、アドレナリンや速筋繊維により糖を多く利用するようになるため乳酸が蓄積していくと理解されています。
乳酸の再利用
一般では乳酸蓄積は疲労状態の現れとして知られていますが、
持久力のある遅筋繊維や心臓の筋肉である心筋はミトコンドリアが多く、その分乳酸を多く使うことができます。
激しい運動で作られた乳酸が、遅筋線維や心筋で使われるという代謝が行われているのが分かります。
乳酸は疲労物質か
乳酸の発生や乳酸の再利用を見ていくと、乳酸とは運動時の糖の消費による発生と遅筋繊維や心筋などによる消費のエネルギーサイクルの一つです。消費<生産となるLTで乳酸が蓄積されます。
乳酸が蓄積すると身体はどのように反応するのでしょうか。
乳酸による影響
カリウムは関節的に筋肉のエネルギー代謝や神経伝達、筋肉の収縮を補助する作用があり、乳酸は筋肉からカリウムが漏れ出すことによる筋収縮の低下を阻止する報告があります。
乳酸は筋肉 からカリウムが漏れ出すことによる筋収縮の低下を防止することが報告されており、この点では乳酸は疲労を起こすどころか疲労を防ぐといえる。
運動時の筋エネルギー代謝から考える疲労研究の現状
それだけでなく乳酸は血管や傷の修復、ミトコンドリアを新しく生み出す働きがあることも報告されています。
乳酸は血管新生、傷の修復促進、ミトコンドリア新生、遺伝子発現調節、といった働きがあることも報告されてきている。
運動時の筋エネルギー代謝から考える疲労研究の現状
疲労するとは
乳酸の蓄積によりカリウムに働きかけ筋収縮低下を抑制する事が分かりました。
では、乳酸が蓄積することだけが疲労蓄積ではなければ、他にどのような疲労原因があるのかを見てみましょう。
体内の糖の減少
糖は体内でグリコーゲンという形で貯蔵されており、その貯蔵量が減れば、乳酸もできにくくなります。
マラソンなどの長時間運動では、だんだんとグリコーゲンの貯蔵が減っていきます。グリコーゲンの貯蔵が減るということは、糖が原料である乳酸も不足し再利用が行われなくなります。
リン酸
ATPやクレアチンリン酸の分解によってできるリン酸も疲労に大きく関わると近年は注目されています。リン酸がカルシウムと結合することで、カルシウムイオンの出入りが阻害され、筋収縮を妨げる要因になります。
その他の要因
脱水によるパフォーマンスの低下、体温上昇、活性酸素など様々な要因が疲労 に関することが明らかになっています。
脱水によるパフォーマンスへの影響についてはこちらの記事をご覧ください。
乳酸の数値
乳酸は運動する事で生産され、消費よりも生産が増えれば乳酸は蓄積されます。乳酸が蓄積する事が疲労しているとは一概には言えず、乳酸によるメリットもある事が分かっています。
血中乳酸濃度は、あくまでも血液から筋肉内のことを間接的に推定する指標として利用するのが適しています。
例えば、運動が初めての方に対して、有酸素運動を行う際にLTがどの程度の運動強度なのかを判断する為にはとても有効でしょう。
まとめ
乳酸の蓄積は疲労蓄積の証で、乳酸を流すと言った謳い文句のサービスまである程です。しかし、乳酸とは筋肉や心臓のエネルギー源でもあり、代謝と消費のサイクルに重要なものです。
それだけでなく、乳酸が与えるメリットについての報告もあります。
運動強度を上げていくと、ある強度から急に血中乳酸濃度が高くなるLTは消費よりも生産が多くなる運動強度なので、乳酸の数値を測定する事は、運動強度の判断にとても有効な数値と言えます。
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