コアスタビリティトレーニングはウエスト周りが気になる方や、姿勢を改善したい方が手軽に行える事で、とても人気が高まっているトレーニング方法です。

興味深い事にコアスタビリティトレーニングに何が含まれているのか、またはどの筋肉で成り立っているのかに関して、いまだ明確に示されていません。
研究論文の大半が、横隔膜を鍛える事で体幹の安定性を補助する可能性を示すというものだからです。

すなわち、横隔膜のコントロールしトレーニングする呼吸パターンは、コアトレーニングにとって、とても重要なことを意味しています。

今回は呼吸にフォーカスし、呼吸が体幹部に及ぼす影響から、呼吸のための正しい姿勢を紹介します。

コアスタビリティとはなにか?

体幹とは先ほど述べたように明確な定義はありませんが、Kiblerらはこのように体幹、または体幹の安定性について定義しています。

コアスタビリティとは、骨盤上の体幹姿勢と運動のコントロール能力であり、統合された競技活動において、力や運動を最大限に発揮して、末端部位までの転移をコントロールできる能力である。すなわち、近位の安定性が遠位の可動性を決定づけるともいえる。

Kibler WB, Press J, and Sciascia A. The Role of core stability in athletic function. Sports Medd 36: 189–198, 2006.

手足を除いた体幹部のみがコアスタビリティではなく、体幹部を安定させながら手足をコントロールできる能力であると言えます。

また、パフォーマンスピラミッドという考え方を提唱し、パフォーマンス向上に関する研究行うGray Cookはこのように定義づけています。

最良のコアトレーニングプログラムとは、呼吸しながら、また、所定の競技や活動でコアが受けるストレスを模倣するように機能的に四肢を動かしながら、自然でニュートラルな位置に脊柱を保持することを要求するトレーニングである。

Cook G. Athletic Body in Balance . Champaign, IL: Human Kinetics, 2003. pp. 63.

適切な背骨の形(ニュートラル)を保ちながら手足を動かせるようにする能力と言えます。
重たい買い物袋を持ち呼吸を続けながら、買い物袋の重さに抵抗し、背骨をニュートラルに保ちながら帰宅する事とイメージしてみましょう。

コアスタビリティに必要な能力

呼吸を続けながら適切なポディションで背骨を安定させ、そのうえで手足をコントロールするのが、コアスタビリティである事が分かりました。

このコアスタビリティを維持する為にどのような能力が必要か、Panjabi氏らによると中核神経系・骨格系・筋系の3つのサブシステムが一体的に動く必要があると提唱しています。

背骨の安定性は筋肉だけに依存しているのではなく、中核神経系への知覚情報にも依存しています。したがって、背骨の受動的構造の保護、背骨や各関節など運動制御、筋力と筋持久力が必要だと考えられます。

トレーニングメニューを作成するにあたり考慮する必要があります。

コアの筋肉

体幹部やコアの筋肉と言ってもさまざまなものがあります。
大きく2分するとインナーマッスル(深部筋群)とアウターマッスル(浅部筋群)と分けられます。

インナーマッスルは背骨の安定させるためと考えられ、それにより、アウターマッスルが歩行など活動を行う事を可能にしています。

インナーユニット

コアのインナーマッスルが背骨を安定させ、それにより身体活動を行える事が分かりました。このコアのインナーマッスルは4つの筋肉で構成されています。

  • 横隔膜
  • 腹横筋
  • 骨盤底筋(骨盤筋)
  • 多裂筋

それぞれはインナーユニットと呼ばれ、お腹の奥で円柱の形を作っています。腹横筋と多裂筋が円柱の壁を作り、骨盤底筋と横隔膜が円柱の底部と天井部を形成していると考えられます。

これらの筋肉は横隔膜が働く事により、骨盤底筋による抵抗と腹横筋全体の伸張性収縮と合わさって、お腹の中の圧を高めます。

このように、腹横筋の活動により、お腹の中の圧に変化が起こりインナーユニットが活性化されます。

インナーユニットについて詳細な内容についてはこちらの記事をご覧ください。

横隔膜の役割

コアスタビリティを獲得するにはインナーユニットを活性化させ背骨の安定をはかり、それによってアウターマッスルや手足をコントロールする事が大切でした。

インナーユニットは円柱の形を形成しており、横隔膜の動きによって活動されます。したがって、正しい呼吸が行えないとインナーユニットによる背骨の安定は望めません。

正しい呼吸が出来ない人は、横隔膜が姿勢安定筋として働くための協同性や持久力および筋力が不足している可能性が高いと言えます。

また、呼吸は、運動能力の向上に必要な基本能力であると言え、効率的な呼吸パターンの獲得が重要です。

横隔膜と腰痛の関係

横隔膜の働きによりインナーユニットが活性化され、背骨の安定がはかれる事がわかりました。

興味深い事に適切な呼吸が行る人と行えない人では、適切な呼吸を行えない人は腰痛になりやすりという報告もあります。

慢性腰痛の患者18名と腰痛のない人29人を対象に、通常呼吸中および通常呼吸を行いながら外的負荷に抵抗して行う上肢と下肢の等尺性屈曲動作中に測定を行った。その結果は慢性腰痛のない群は横隔膜の移動がより小さく、横隔膜がより高い位置にある。

横隔膜の呼吸運動はその安定化の働きと同時に起こる。横隔膜の身体安定機能が弱い人はこの呼吸との同時性に障害があり、脊椎分節への過剰な負荷が生じる。

Kolar P, Sulc J, Kyncl M, Sanda J, Cakrt O, Andel R, Kumangai K, and Kobesova A. Postural function of the diaphragm in persons with and without chronic low back pain. J Orthop Sports Phys Ther 42: 352–362, 2012.

横隔膜の活動が不十分だったり、横隔膜と他の筋肉や動作に協調性がないと、背骨の安定が損なわれる事を示唆しています。

姿勢と呼吸

姿勢と呼吸がどのように相互に影響し合っているのか、興味深い研究を紹介します。

被験者はトレーニング装置Spiro Tigerに向かって行う行う呼吸訓練を1回10分間ずつ週3回行った。研究者らは胸椎と腰椎の湾曲、肺機能、および体幹の屈曲・伸展の等尺性筋力を測定した。
・胸椎後弯が5.5°減少した
・腰椎前腕が3.1°減少した
・肺機能は、努力肺活量が4.1ℓから4.3ℓに、1.0秒の努力呼気肺活量が3.4ℓから3.7ℓに改善した
・体幹部屈曲筋力は10.6%改善したのに対して、体幹部伸展筋力に変化は見られなかった

Obayashi H, Urabe Y, Yamanaka Y, and Okuma R. Effects of respiratory-muscle exercise on spinal curvature. J Sport Rehabilitaion 21: 63–68, 2012.

呼吸筋を鍛えるエクササイズを行うことにより姿勢が改善する事、それはおそらくインナーユニットが刺激されたためである事がわかります。
この研究で、呼吸訓練により姿勢により効果が起こりうる事を示唆しています。

正しい呼吸とは

呼吸は自律神経系により制御され調節されていますが、だからと言って適切な呼吸が自動的に行われているわけではありません。

身体的・情緒的要素により呼吸の速度や呼吸の量は変化し、これを埋め合わせるために、胸の上側(胸郭上部)にある呼吸補助筋群を動員したり、呼吸速度を早くしたりして、呼吸の要求に応えるため様々な呼吸をします。

呼吸の仕方も身体の動かし方と同様に、正しいか正しくないかに関わらず、習慣化する可能性があります。

習慣化した呼吸方法の再トレーニングは効果があると示唆されていますが、1日に何回か繰り返し練習する必要があるため、根気強く継続する必要があります。

良くみられる呼吸例

正しくない呼吸パターンとして一般的にみられる特徴がこちらです。

  • 吸いはじめに胸部の上昇が起こる
  • 肋骨の側方への広がりが不十分
  • 口呼吸
  • 首の前側にある筋肉を緊張させてしまう
  • 肩甲骨や肩があがってしまう
  • ため息呼吸
  • 安静時の呼吸数が毎分12~14以上
  • 頭部が前方にでてしまう

この例は網羅的なリストには程遠いですが、呼吸に問題があるか否かを判断するきっかけになります。

正しい背骨の作り方

お腹の奥にあるインナーマッスルであるインナーユニットは、正しい背骨のライン(ニュートラルポディション)が最も活性化しやすく、ニュートラルポディションでない状況では活性化しづらくなってしまいます。

女性の悩みとして尿漏れがあり、これはお腹の圧の上昇した際に骨盤底筋が正しく機能しない事で起こります。ニュートラルポディションを保てない、言い換えれば姿勢が悪い人ほど起こりやすい症状です。

こういった悩みや腰痛など予防する為に、まずはニュートラルポディションを覚える必要があります。

ニュートラルポディションへの準備

構造的に正しい背骨の形であるニュートラルポディションを覚えるにあたり、まずは正しい背骨を作れる柔軟性を獲得するのがスタートです。
そのために必要なストレッチ種目を行います。

キャット&ドッグ

正しい背骨のラインを作るために、まずは背骨全体を大きく動かします。
10回程度、徐々に動きを大きくするように。

背骨全体を丸めます。
両手で床を押すように胸を丸め、お腹を引きこむように腰も丸めます。

背骨全体を反ります。
肩甲骨同士をくっつけるように胸を反り、お尻を突き上げて腰を反ります。

アイアンクロス

ひねりの動きを加え更に背骨の動きを作ります。
10回程度、徐々に動きを大きくするように。

画像のように横向きに寝ます。

目線でリードしながら胸を開き、背骨全体を捻ります。

ニュートラルポディションを作る

構造的に見た正しい背骨の形は二重のSが重なった形をしています。

一つ目のS字は腰の背骨から胸の背骨にかけてで、腰と床には手一枚分程度の隙間があり、胸と床は接地しています。

二つ目のS字は胸の背骨から首の背骨にかけてで、胸は床と接地し、首は床から手一枚がすっぽり入る程度隙間があります。

この正しい背骨を寝て、座って、立って作れるようにする事で、呼吸トレーング時によりインナーユニットを活性化できます。

まとめ

コアスタビリティ、体幹の安定には呼吸による背骨の安定が重要なのが分かりました。呼吸をただしく行う事で姿勢の改善だけでなく、腰痛の予防にもつながるほど、呼吸の重要性が理解出来たかと思います。

今回は役割や構造、呼吸トレーニングを行う準備について説明しました。
実際のトレーニング方法についてはこちらをご覧ください。

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