古くから筋肥大が筋力の向上には必要だと考えられてきました。
しかし近年、この考えに異を唱える研究が発表され、トレーニングすることで得られた筋サイズの増大が運動時の筋力の向上に果たす役割や、筋力の向上が運動パフォーマンスに及ぼす影響を否定する意見が出てきました。
実際、筋肥大は運動時の筋力の向上やパフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか?

筋サイズと筋力

レジスタンストレーニングを介して筋サイズを増大させる事は、筋力やパワー系アスリートにとって長く共通の目標とされてきました。
段階的トレーニングにおいて、筋持久力ステージでは、その後の筋力やパワーステージのような高強度トレーニングステージで、高い力発揮を繰り返し行える能力や耐久力を高める事が目標ですが、身体組成の向上と筋横断面積の増加も期待されています。

筋肉に最大随意収縮を行わせると、最大刺激を受けた筋においてもそうでない筋においても、発揮される力が、筋の横断面積と直接関係しているという研究結果があり、特にいわゆる速筋線維の横断面積と、速筋線維と遅筋線維の横断面積の比は、力とパワーの重要な調節因子であると言われています。
つまり横断面積の増加は筋力レベルの向上に関係があるということが言えるのです。

筋力との関係において筋サイズの重要性を最もよく説明する例としては、ウエイトリフティングやパワーリフティングなどの筋力系の競技や、レスリングやボクシングなどの格闘技で体重制限が設けられていることです。
特に筋力系の競技では、軽量級の選手と比べて、体格の大きい選手ほど筋量が多く、より重いウエイトをあげることができ、階級の上下に伴い、挙上重量の平均や合計も上下する傾向にあります。
筋横断面積が筋力とパワーに影響を及ぼさないのであれば、この傾向は見られないでしょうし、できるだけ軽量級で戦う方が有利になるということになります。

レジスタンストレーニングは十分な筋肥大をもたらすか。

トレーニングによる筋肥大は筋力やパフォーマンス向上に関連しないという意見は、トレーニング誘発性の機能的な筋肥大は微々たるものであり、最大筋力の発揮に影響を及ぼすには不十分であるという考えから生まれたのではないかと考えられています。
トレーニング誘発性筋横断面積と最大筋力の向上の関係については、全身のホルモンの急性増加とレジスタンストレーニングへの適応との関連性は、以前から考えられているものと同様だと言われています。
しかし、レジスタンストレーニングと内分泌系の応答との直接的関係は確立されていません。
レジスタンストレーニングによる筋肥大は、週、月、年単位で蓄積する可能性があります。
急性ホルモン応答と適応が起きないこととの関連は、被験者のトレーニング経験の少なさや研究期間が短いことが挙げられ、それらが筋肥大の蓄積を妨げる一因になっているのではないかと考えられています。
筋横断面積がトレーニングよって最大どの程度増加するのかは不明ではありますが、トレーニングが誘発する筋肥大はかなりの量に上り、筋力とパフォーマンスにプラスの影響を与える事を示す研究結果は多くなっています。

筋横断面積の長期的な増加は、体重の大幅増加や男性ホルモンの使用に関わりなく、約20~35%に上る事が示されている。

Fry AC. The role of resistance exercise intensity on musucle fibre adaptations.他

エリートクラスの筋力-パワー系アスリートやボディビルダーの筋横断面積は、トレーニング経験のない被験者の3倍に上る。

Alway SE, MacDougall JD, Sale DG, Sutton JR, and McComas AJ. Functional and structural adaptations in skeletal muscle of trained athletes.他

ただし、外因性男性ホルモンがこれらの研究において果たした役割の程度は不明です。

多くの長期的研究は、人間は力発揮に影響を及ぼすだけの十分な筋肥大を蓄積できることを示しています。
成熟期には自然と筋量が増大し、それにより筋力とパフォーマンスを向上することに筋肥大が関係しているかどうかということや、男性は女性よりも一般的に筋量が多く、筋量の差が男女の筋力の差を生んでいることについては、議論する必要はないでしょう。
また過体重の人は標準体重の人に比べて大きな筋肥大を示しますが、その多くは下肢への持続的な負荷に起因していて、肥満の程度(負荷)と下肢の筋サイズや筋量との間には強い関係が見られます。

そして、アスリートや年単位のレジスタンストレーニングの経験者は、トレーニング未経験者、トレーニング経験の少ない人、持久系トレーニング実施者と比べて筋量が多いことが報告されています。

このようにレジスタンストレーニングから予測される筋横断面積の増加の程度は、男女間や過体重とそうでない人との間で報告されている筋横断面積の差と同程度であり、どの場合も、筋横断面積の差が多大な筋力の差をもたらしていると言えるでしょう。

つまり、成熟期の筋量の増大の結果や男女間の筋量の差、体重増加や肥満の結果として、筋力が明らかに増大する以上、筋力やスポーツパフォーマンスに影響を与えるほど、レジスタンストレーニングよる筋肥大は起きないということも、その筋肥大が筋力やスポーツパフォーマンスに良い影響を与えないということも、どちらも考えにくいと言えます。
実際、数えきれないほどのアスリート、コーチなどが月単位、年単位のレジスタンストレーニングによって、かなりの筋量が蓄積されているのがテレビなどで見てもお分かりになるかと思います。

筋力向上後に筋サイズが元に戻ると…

筋肥大が筋力の増大に影響を与えるということは、理にかなっていると言えるでしょう。
レジスタンストレーニングは収縮性たんぱく質の数を増加させ、その筋の力発揮能力の増大が見込まれると言われてきましたが、筋肉全体で見れば、この増加は筋力の変化に意味のある影響を与えないかもしれないという意見もあります。

とある実験で、若齢者(20〜35歳)と高齢者(60〜75歳)対象として、12週間のレジスタンストレーニング後に、筋線維サイズと1RMの筋力を測定したところ増大が確認されました。
しかしその後トレーニング量を1/3や1/9に減らすと、高齢者の場合、筋線維の横断面積の増加分は元に戻ったのですが、増加した筋力は維持されたという結果がでたのです。
さらに若齢者の場合は、32週間トレーニングをしない期間を設けた後に測定を行ったところ、高齢者同様、横断面積は元に戻りましたが、筋力は維持されたという報告もありました。筋力は定期的な測定そのものを通じて、維持されたのではないかと考えられています。

これはトレーニングによって誘発された筋力の増大には、同様に誘発された筋肥大が失われても、影響がないということになり、神経系の能力が筋力維持の大きな要因になっているのではないかと言えます。

別の研究では、レジスタンストレーニングを低負荷で行なった場合や加圧トレーニングで1RMの15%でトレーニングを実施した場合などでは、筋サイズの増加は見られても筋力は増大しなかったケースが多かったようです。

このような研究から、筋肥大が筋力向上のメカニズムであるとしても、それは筋力を増大させることにとっては弱いメカニズムであって、筋力を最大にする事を目的としたトレーニングでは、筋肥大を優先すべきではないという考えもあるようです。
筋肥大はトレーニングにおける副産物であり増大そのものは有益ではないため、筋肥大そのものを目標に掲げたトレーニングは、実際の競技などの練習時間も減ってしまい、筋力アップやその先にあるパフォーマンス向上の妨げになってしまうということです。

筋力とスポーツパフォーマンスの関係性

筋力が上がったからといって、スポーツパフォーマンスが上がるとは限らないということは皆さんご存知でしょう。
競技特異性能力をあげたり、特異性動作を長い時間続けるために、筋力や筋持久力は必要になります。
例えばサッカー選手がレジスタンストレーニングにする事で全身の筋力を上げたとしても、それだけでドリブルやシュートがうまくなるかと言われたらそうでは無いですが、一試合ドリブルしたりロングシュートを打ちたい時に打ったり、相手との接触に負けない体幹部を作るには筋力や筋持久力が必要だということです。

そのような競技特異性能力を向上させるには、競技関連そのものを練習することが必要になってきます。
トレーニングによって向上した筋力をスポーツパフォーマンス向上のために生かすには、様々な筋肉を競技特有の動作でうまく動員させるコーディネーションの能力が必要であり、トレーニングで行っていた動作とは異なる動作でも、向上させた筋力を使う事ができる必要があります。
そのために、競技特異性動作そのものを練習する時間はもちろんのこと、同じ筋肉を使うにしても、逆に競技とは異なる動作からのアプローチで、様々な動きで筋力を高める事も重要でしょう。

つまりやみくもに筋力を上げても、パフォーマンスそのものに繋がらない結果になりかねません。
筋力とスポーツパフォーマンスは密接な関係にありながらも、筋力向上=スポーツパフォーマンスの向上とは言い難いでしょう。

まとめ

トレーニングによる筋肥大がもたらす筋力向上や、それに伴うスポーツパフォーマンスの向上についての関係性は更なる研究と議論が必要でしょう。
体重を出来るだけ増やさずに筋力を上げなければいけないというアスリートや、体重増加による筋力向上を競技に活かさなければならない場合などには、この関係性がより明らかになることで、より良いパフォーマンスへつながるトレーニングをすることができるようになるのではないでしょうか。
この関係性の解明が、今後のスポーツ業界のパフォーマンスアップへつながるかもしれませんね。

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