体幹トレーニングの人気が高まっていますが、それらのエクササイズをレベルに合わせて安全に組み立てる方法が重要です。

幅広い研究の結果から、体幹の筋群をキープしながら行うエクササイズ、すなわち背中を丸めずに行うトレーニングが安全である事、また、腰の負傷頻度低下に役立つ事が明らかになっています。

安全で適切な挑戦課題を行うために、体力レベルに合わせ難易度を変化させる方法を紹介します。

怪我を予防するために

障害に腰痛を経験する人は最大約85%に上がると言われ、45歳以下では、腰痛が活動を低下させる主な原因と言われています。
体幹トレーニングを行う前に、安全かつ効果的な方法を理解しておく必要があります。

脊椎の姿勢は、損傷が起こる直前の脊椎が耐えうる圧縮負荷の大きさを決める決定因子であることが判明している。屈曲姿勢では、脊椎が負荷に耐えられる限界である降伏点と最終的な圧縮強度ははるかに小さい。

Gunning JL, Callaghan JP, and McGill SM. Spinal posture and prior loading history modulate compressive strength and type of failure in the spine: A biomechanical study using a porcine cervical spine model. Clin Biomech 16: 471–480, 2001. 

これは、背骨に負荷がかかっている状態で背中の丸まりが加わると、背骨が耐えられる負荷が減少し、怪我をするリスクが増加することを意味しています。

体幹トレーニングを行う最も安全な方法は、負荷が身体にかかる際に必ず生理的なS字の背骨(ニュートラル)を保持する必要があります。

このニュートラルな背骨の作り方や、呼吸による体幹のインナーマッスルのトレーニング方法についてはこちらの記事をご覧ください。

体幹トレーニングの組み立て

体幹トレーニングのレベルを最適なレベルに保つには、基本的なエクササイズのみでなく、挑戦的な課題を取り入れていく必要があります。これを漸進性の原則と言います。

研究者のBlanchard & Glasgowはエクササイズの漸進のモデルを提案しています。

横軸が時間、縦軸はエクササイズの難易度を表しています。
最も上手に行えるエクササイズをAで表し、このレベルはニュートラルな姿勢で背骨を安定させ、呼吸を継続して行えるレベルです。
次の段階Bは、基本的な課題を更に複雑にする、追加的な要素をエクササイズに加えるレベルです。

このように、あるエクササイズが習得できたら、挑戦と向上を目的に追加エクササイズを導入する必要があります。

よくある漸進の例として、体幹トレーニングのキープ時間を伸ばすのを目にしますが、この漸進は正しいのか見てみましょう。

体幹トレーニングのエクササイズ時間

キープ時間を増やすことも漸進法として認められていますが、キープ時間に関しては注意が必要です。

静的姿勢を長時間持続している間の筋の酸素化(MOx:muscle oxygenation)を調べ、静的な姿勢保持はMOxを低下させ、傷害と疼痛の原因となる疲労因子を増加させる可能性がある。
MOxレベルとLBPの間には相関関係があると考えられ、等尺性筋活動中のMOxを維持する事が肝要である。等尺性の姿勢を30秒ホールドすると、腰部伸展筋群のMOxが低下する事が明らかにされている。

Kell RT and Bhambhani Y. Relationship between erector spinae muscle oxygenation via in vivo near infrared spectroscopy and static endurance time in healthy males. Eur J Appl Physiol 102: 243–250, 2008. 

MOxレベルと腰痛の間には相関関係が考えられ、体幹トレーニング中のMOxを維持する事が重要です。したがって、体幹トレーニングを30秒行った後は、筋を休めMOxレベルの回復を図り、怪我のリスクを軽減する事が推奨されます。

単にキープ時間を長くする事が適している訳ではない事が言えます。

むしろ、キープする時間は30病程度にとどめ、エクササイズの難易度を高める事、または、短い時間の体幹トレーニングを行いセット数を増やすようにした方が良いと考えられます。

種目選択

トレーニングを漸進させる際は「運動」「モーメント」の違いを理解する必要があります。

屈曲運動とは運動学の用語であり、脊柱の前屈(背骨を丸める)を指し、屈曲モーメントは運動とは関係なく生じる力を表します。

屈曲モーメントをわかりやすく言うと、例えば、壁を押した時に足で踏ん張った力を、身体前面の筋肉により脊柱を固めて、脊柱が反る方向への動きを防いでいます。
脊柱の屈曲モーメントが働いていないと、身体は足からの力と壁からの反力により、腰が反っていってしまいます。

この時、体幹部の筋肉は屈曲運動を起こしていませんが、屈曲モーメントを生み出していると言えます。

腰部の負傷や痛みを避けるためには、屈曲運動を行わずに、屈曲モーメントによりトレーニングする事が重要です。

また、ウォータールー大学Stuart McGillは通常の腹筋(シットアップ)は腰痛の原因になると発表しております。

ひざを曲げた状態か、伸ばした状態かに関わらず、上体起こしで脊柱が圧迫される力は、米国立労働安全衛生研究所が定めた腰痛につながる基準値と同等である。何度も繰り返すことで、背骨の間の椎間板を痛める可能性が高い。 

Core Training : Evidence Translating to Better Performance and injury Prevention/Stuart Mc Gill

この発表を元に日本バスケットボール協会でも、腹筋運動は推奨していません。

呼吸の方法

体幹トレーニング中は呼吸を止めてしまいがちですが、呼吸を止めてしまうと横隔膜による体幹の安定が損なわれてしまいます。

鼻から息を吸い(2~4秒)口をすぼめてゆっくりと息を吐きます(4~8秒)。

吸った際に肋骨が横に広がり、約3.7~5cm両手が離れお腹が膨らみます。お腹が胸よりも先に持ち上がります。さらに、胸は顎に向かって上方に動くのではなく、やや前方に動きます。

呼吸による体幹トレーニングの方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

トレーニング種目のバリエーション

エクササイズのやり方と漸進の方法を紹介します。
1,2,3,4と数字が大きくなるに従ってエクササイズの難易度が高くなりますので、レベルに合わせ漸進を行ってみましょう。

デッドバグ

1,片足伸ばし

仰向けに寝て、股関節と膝を90°に曲げ、両腕を真上に上げるます。

ブリージング(呼吸)と 正しい背骨の形(ニュートラル)を保ち、片脚を交互に曲げ伸ばしします。

足を伸ばす事で背骨が反ろうとするモーメントを、腹部の筋群で腰の反りが起きないように注意しましょう。

30秒間(約10回)を目標に行いましょう。

2,片足、片腕伸ばし

足と対角線の腕を交互に曲げ伸ばします。

足と腕を伸ばす事で背骨が反ろうとするモーメントが更に強くなるので、腹部の筋群で腰の反りが起きないように注意しましょう。

30秒間(約10回)を目標に行いましょう。

3,タオル片足伸ばし

腰の下にタオルを置き、先ほどの片足伸ばしを行います。
タオルを置く事で、腰が反るモーメントがより発生するので、腹部の筋群で腰の反りが起きないようにコントロールしましょう。

30秒間(約10回)を目標に行いましょう。

4,タオル片足、片腕伸ばし

同様に腰の下にタオルを置き、先ほどの片足、片腕伸ばしを行います。
足と腕を伸ばす事、タオルを腰の下に敷く事で、腰を反るモーメントが更に強くなるので、腹部の筋群で腰の反りが起きないように注意しましょう。

30秒間(約10回)を目標に行いましょう。

プランク

1,頭が高い位置でのプランク

背骨がS字の形を保ちながら、腰が反るモーメントをお腹の筋群で耐えるトレーニングです。

頭の位置が高い方が、腰へのモーメントが少なくなるので、床で腰への違和感がある場合は、こちらの種目から行いましょう。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきます。

2,プランク

背骨がS字の形を保ちながら、腰が反るモーメントをお腹の筋群で耐えるトレーニングです。
肩のすくみや、膝の曲がりが出ないように注意しましょう。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきます。

3,腕を前に進めたプランク

腰が反ろうとするモーメントは、手と足の距離が遠いほど強くなります。

長い吊り橋ほどたわみが強くなると同様に、支点と支点の距離によりモーメントを調整できます。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

4,足が高い位置でのプランク

足の位置を高くする事で支点との距離が長くなり、難易度が上がります。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

サイドプランク

ニーリングサイドプランク

肩の真下に肘がくるように、両膝が身体の前に出ないように注意し形を作りましょう。お尻が落ちないように、床側の脇腹で耐える種目です。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

足を前後に開いたサイドプランク

先ほどのニーリングプランクを足を伸ばして行います。
足を前後に開く事で、バランスが取りやすくなり前後へのブレを抑えて行えます。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

サイドプランク

両足を重ねて行うベーシックなサイドプランクです。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

足が高い位置でのサイドプランク

足の位置を高くする事で支点との距離が長くなり、難易度が上がります。

30秒キープを目標に徐々に時間をキープ時間を増やしていきましょう。

バードドッグ

片足バードドッグ

四つん這いになり、S字の背骨をキープした姿勢を作ります。
片足を高く上げると腰が反ろうとするモーメントが発生するので、腹部の筋群で腰が反らないようにコントロールします。

足を上げて四つん這いに戻る、足を交互に10回繰り返しまうす。

バードドッグ

四つん這いになり、S字の背骨をキープした姿勢を作ります。
片足、対角線の片腕を高く上げると、腰が反ろうとするモーメントが更に発生するので、腹部の筋群で腰が反らないようにコントロールします。

足と腕を上げて四つん這いに戻る、足と腕を交互に10回繰り返しまうす。

片腕伸ばし

肘を付き膝を伸ばしプランクの姿勢から片腕を上げます。
プランクの漸進よりも難易度が高くなるため、プランクの漸進メニューを最後まで行えるようになってから挑戦しましょう。

腕を伸ばしプランクの姿勢に戻り、逆の腕を伸ばしと交互に10回が目標です。

片足、片腕伸ばし

プランクの姿勢から、対角線の片腕片足を上げる種目です。

最も難易度が高い種目ですので、今までの種目がコントロールできるようになったら挑戦していみましょう。

腰部への負担がかかりやすい種目ですので、3秒キープから徐々に秒数をあげ、10秒キープを目標にしましょう。

まとめ

腰痛と体幹部の筋群には密接な関係があり、体幹部のトレーニングを行う事で腰痛のリスクを低減できます。

しかし、体幹トレーニングが安全に行われなければ、トレーニング自体が腰痛の原因となってしまいます。

自身のレベルに合った種目の選択を行い、徐々に難易度を上げ、適切に体幹部の筋力向上が図れるのが望ましいです。また、トレーニング種目だけでなく、姿勢や呼吸、実施時間など、安全とされる方法を理解し継続して行っていきましょう。

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