たんぱく質の食品に多く含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン。
グルタミンと聞くと昆布に含まれる旨味成分をイメージしますが、これはグルタミン酸で同じアミノ酸でも構造の異なる物です。
今回はこのグルタミンについて見ていきましょう。
グルタミンの構造
グルタミンを理解を深めるためには構造から見ていく必要があります。
-NH2で表わされる1価のアミノ基が他のアミノ酸では1つですが、グルタミンはアミノ基が2つあります。
そして、窒素原子を2つ持っているので、
このグルタミンは体内の遊離アミノ酸の約60%を占めるほど身体が必要としているアミノ酸で、
主な役割
体内の遊離アミノ酸の60%を占めるグルタミニンは、窒素を運搬し様々な役割を果たします。その役割を見ていきましょう。
小腸の栄養源
腸内の菌から守り、栄養の吸収も行う小腸粘膜を維持するのに、最も重要な栄養素として知られています。
がん治療における化学療法や放射線療法などによって小腸粘膜が萎縮してしまった際も、再生のためにグルタミンが利用されます。
免疫力の向上
グルタミンは、正常または悪性の組織に由来するかどうかにかかわらず、他の哺乳動物細胞株の増殖に必須であり、タンパク質の必須構成要素としてのその役割は拡大されるかもしれない。グルタミンがラットにもヒトにも栄養的に必須ではないという事実は、いくつかの哺乳類の臓器がグルタミン酸、アデノシン三リン酸、およびアンモニアからグルタミンの合成に影響を及ぼし得る活性酵素を有するという事実をおそらく反映する。
The role of glutamine in protein biosynthesis in tissue culture.
1957年Levintow氏らにより、細胞の増殖には良性・悪性関わらずグルタミンが必要と報告されました。
このことにより、
怪我やストレスからの回復
術後や怪我をした時、体に強いストレスがかかった時など、グルタミンは大量に消費されます。
体内の遊離アミノ酸の60%を占めるグルタミンは消費されると、筋肉を分解しその濃度を保とうとします。
トレーニングへの影響
グルタミンの役割については広く知られていますが、トレーニングへの影響についてはあまり触れている記事はないように感じます。
筋力アップや筋肥大に効果的と謳っているメーカーもありますが、果たしてグルタミンはそのような効果はあるのでしょうか。
2001年candow氏らの研究を見てみましょう。
若年成人におけるレジスタンストレーニングと組み合わせた経口グルタミン補給の効果を評価した。 18〜24歳の31人の被験者のグループを無作為にグループに割り当て、グルタミン(0.9 g x 除脂肪組織量)またはプラセボのいずれかを投与した。6週間の全身レジスタンストレーニングを行い。トレーニングの前後に、1 RMスクワットおよびベンチプレス強度、ピーク膝伸展トルク、除脂肪組織量の測定を行った。トレーニングによって強度、トルク、除脂肪組織量および3-メチルヒスチジンが増加することを示したが、グループ間に有意差はありませんでした。グルタミングループは、膝伸展トルクで6%、除脂肪組織量で2%、および3-メチルヒスチジンの尿中濃度で41%の増加を示しました。プラセボ群は、膝伸展トルクを5%、除脂肪組織量を1.7%、および3−メチルヒスチジンを56%増加させた。筋力トレーニング中のグルタミン補給は、健康な若年成人の筋肉能力、体組成または筋肉タンパク質分解に有意な影響を及ぼさないと結論します。
Effect of glutamine supplementation combined with resistance training in young adults.
グルタミン摂取グループとデキストリンのプラセボグループ、どちらも筋量・筋力ともにアップしましたが、どちらも
グルタミンの摂取量
怪我やストレスからの回復、免疫機能の向上など回復や免疫に効果を発揮するグルタミンですが、適正量の摂取により効果はより高まります。
ASPEN 2009 guideline for nutrition Support Therapyによると、熱傷・外傷・ICU患者には、グルタミンパウダーを溶かし、経口またはチューブを介して2~3回/日投与すべきと提案されています。
その量は1日で0.3~0.5g/体重とされています。
重度な外傷患者においての摂取量であるので、外傷のない方においてはより少量で問題ないとは思います。
まとめ
グルタミンは体内の遊離アミノ酸の約60%を占めるほど身体が必要としているアミノ酸で、体内で合成できるので必須アミノ酸ではありませんが、怪我や病気の際には摂取が推奨されている条件付き必須アミノ酸です。
グルタミン摂取により筋力や筋量の増加に効果はあまり期待できませんが、グルタミンは小腸の栄養源であり、免疫力の向上や怪我やストレスからの回復など、予防や回復に効果のあるアミノ酸です。
1日体重×0.2g程度の摂取を目標にしましょう。
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